「わすれ酒」。このお酒は、梅錦さんに9年もの間、ひっそりと貯蔵されていたお酒に、気温や貯蔵場所など、様々な自然の環境要因が重なり合って、たまたま、シェリー酒を、あの独特の風味足らしめる産膜酵母菌がついた、という珍しいお酒です。
造ろうと思って造ったわけではない、まさに偶然の産物。
口に含むと、華やかで、まろやか、柔らかい風味がフワッと広がります。ほんのり甘めながら、後味はすっきり。きき酒師の資格を持つ私も、口ではうまく表現できない今までになかった味わいです。
このお酒の発売が決まるまで、いろんなことがありました。
商品の容量、価格から、ターゲット、商品名、ラベルデザインに至るまで、梅錦さんは私に一任して下さいました。一百貨店のお酒売場にいるに過ぎない私は、こんな経験はもちろん初めて。不安になると同時に、すごくわくわくしました。
「わすれ酒」ができるまでには、紆余曲折が沢山ありました。
思い悩んだのはやはり商品名とラベルデザイン。
商品名は、売場の仲間たちと、ああでもない、こうでもないと、議論を重ねあっていました。無数ともいえる候補の中で、第3.4候補に過ぎなかった「わすれ酒」。
この商品名は、当初、私のなかではしっくりきてはいませんでした。何となく、洋風の名前にしようと思っていたのです。でも、忘れられていたかのように、ひっそりと眠っていたこのお酒が、ある日気づいていたら、魅力的なお酒になっていた・・・
これを表現するには、「わすれ酒」が一番いいな、と思いました。
ちなみに、このお酒の個性、生い立ちを表現するには・・・と思い悩みすぎて、「タイムマシン」という、何ともセンスのカケラさえも窺えない商品名も候補に挙がっていた、しかもかなり上位に、ということも付け加えておきます。
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そして、最も私を思い悩ませたのは、やはりラベルデザイン。学生時代から美術は不得手だった私には、これにはまいりました。色々考えて書いて(描いて)みるのですが、まるで子供のお絵かき。
あまりに考えすぎて、ある時、レポート用紙に何となくなぐり書きで、しかも筆ペンで「わすれ酒」と書いてみると、これがなかなか。自分で言うのもなんですが、有名書道家の大書のようだ、と思いました。
早速、そのレポート用紙を、梅錦さんにFAXすると、2、3日後に、正式なラベルデザインの案が送られてきました。本当にただのなぐり書きを、それらしく上手くデザインして下さり、ホッとしたのを覚えています。
今回、梅錦さんよりお話を頂き、このようなかたちで販売させていただくことになって、本当にワクワクしています。とにかく皆さんに試して頂きたい。きっと、面白い、そう思ってもらえると思います。
商品化までには時間もかかり、梅錦さんには気を揉ませる事になったのですが、自分がこうしたい、こうしたらいいのでは?と思ったことを、いろんな方々にアドバイスを頂きながら、何とか表現できたのは、本当にいい経験でした。
私は結婚もしてはいないのですが、今はまさに娘を嫁に出すかのような気分です。皆さんもぜひ、私の娘、「わすれ酒」の旅立ちを見守ってほしい、そう思います。
平成19年1月25日
恵比寿三越リカーショップマスター
板津 貴史
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