Iyoの風 特派員報告
大鼓・秋の宴      梅錦山川株式会社 酒蔵公演実行委員会
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大鼓(おおつづみ)・秋の宴   

 酒蔵公演レポート

 日本酒の日(10月1日)の前日の9月30日、恒例の酒蔵公演が梅錦の木造の酒母室で行われました。

 会場は古い大きな屋根裏のような所で太い柱や棟木のある中で行われます。前方に黒い幕で区切られた舞台、町の婦人会が揃えている座布団とゴザを敷いた客席です。

 木造の2Fなので消防法の関係で人数も1回130名ぐらいしか入れません。しかし、演者と一体になる事ができます。この空間に魅せられての常連もおられ、今回で23回目の開催です。

 14時30分開演に対して14時ごろには、130余名の申込みのほとんどの人が今を遅しと開場を待っておられました。

 その中には松山より西の地宇和郡や、香川県高松の方からと遠い所から来られた人もありました。

 今回の公演は、能の大鼓奏者で無形文化財保持者の大倉流、大倉正之助氏と石笛(いわぶえ)の第一人者横澤和也氏です。

 14時30分社員が酒樽を槌でたたいて始まりました。

 司会の紹介で主催の愛媛新聞社の挨拶、梅錦山川 (株) 社長の挨拶がありました。薄暗い中で音響照明の人達が雰囲気を盛り上げます。いよいよ大倉氏が舞台に登り能というものについて

  • 本来は神に捧げる祝祭に由来するものであること。
  • 古代の芸能に通じるものであり、縄文時代にもさかのぼる歴史をもつものであること。
  • 宇宙の法則に基づく幽玄の世界のものであること。 をわかりやすい言葉で話されました。

 次に、「能にあって、能にあらず」といわれている五穀豊穣を願う「翁・三番叟(さんばそう)」の演奏にはいりました。

  澄んだ、体にトンと入っていくような大鼓の音と掛け声の微妙なバランスに、能がわかる人、わからない人に関係なくその世界に引き込まれていくようでした。また、この時に発せられる声は、人間がまだ十分に言葉という表現形体を会得していなかった頃を思い起こさせるかのごとく不思議と体に訴えかけるものでした。

 人間の体の奥の方からの叫びのようであり、体全体での表現は大変エネルギッシュに感じました。

 その後横澤氏が石笛(いわぶえ)について話をされ、マイクやライトの届かない舞台の袖で石笛本来の神聖な音を聞かせてもらいました。石笛は、人工的に石に穴をあけたのでなく、自然に穴があいたものであること、江戸時代までは神社やお寺で催事の時に使われるのみであったということです。

 そして、大倉氏と横澤氏の共演で、能の代表作伊勢物語の筒井筒の一節である獅子の演奏が始まりました。それぞれ素朴な音色の楽器や掛け声の迫力に皆うっとりとしてしまいました。

 通常、能では行わないアンコールにも応じていただき、また酒樽で鏡割り、抽選による色紙などのプレゼントにお客様は皆大喜びでした。

 それだけでなく、大倉氏は自分の大事な大鼓を持って客席に入り皆に触れてもらったり、叩いて音を出させたり、会場の中は興奮のどよめきでいっぱいになりました。

 横澤氏も石笛や横笛を触らせたり、説明に皆が寄っていっていました。

 大倉氏の大鼓は馬の皮と桜の木の胴と緋色の麻のひも・絹のしめでできており、桜の木の胴は桃山期のもので、代々受け継がれてきたものであることを知りました。

 小鼓は湿り気がある方が良く、大鼓は湿り気を嫌い暖めて手を触れないくらいに熱くして乾燥しなければならないということです。この両極端な楽器を同時に同じ場所で演奏する能は、他には見られない日本独特のものであること。それと同時に外でも演じられるのものであり、自然の環境に左右され同じ条件でのものは一つもないこと。それが、演者にとっての醍醐味らしいのです。

 このようなものを普通の人に触らせ、叩かせる大倉氏の心の大きさにはビックリしました。お客様もそれを感じて本当にこんな事ができることを喜んでいました。

 2回目の公演は18時からでしたが1回目同様大変なものでした。知人の紹介なのか遠く東京や宮崎からのお客様もありました。

 お客様にアンケートをお願いした中からをごく一部ですがご紹介します。

  • 身が洗われるようだった。
  • 大鼓と石笛だけでこんなに感動させられるとは
  • 能はあまり好きではなかったが好きになれそう(若い人)
  • 普通能を見てもただそれだけだったが、いろいろ教えてもらって能の楽しみ方がわかった。
  • 遠くから来たけれど来て良かった。

など感激の言葉がいっぱいでした。

 翌朝の散歩の人達の中でもこの話でもちきりだったとか。

 なお、ご本人達といえば大倉氏は当日朝フランスのリヨンから(しかも予定より1時間遅れで)、横澤氏は中国より関空に着き落ち合って車で梅錦まで、大倉氏自身が運転して来られたのです。大倉氏は翌日朝から仕事があるので公演終了後間もなく御自身で車を運転して関空近くのホテルへ向かわれました。

 演奏も凄かったのですが、タフな動きにもまたビックリしました。御人柄も大変気さくで皆もファンになってしまいました。

(酒蔵公演を知らない方の為にちょっと詳しく書きました。)


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